「パパー、あきとふゆとなつはいらない~?」
「んー、秋はもう終わったし、夏はまだだから、冬と春の図鑑を入れておけば良くない?」
「冬の後は、春~?」
「そうだよー。春、夏、秋、冬。冬が終わったらまた春から始まるから、今の時期は冬と春の図鑑で大丈夫だよー。」
「おっけー♪」
冬と春の図鑑を鞄に押し込み、アリスの手帳と鉛筆を詰め込む。
冒険には相応しくないワンピースに身を包み、動きやすいスニーカーを履いて出発。
向かった先は、俺の小学校への通学路。
その途中にある小さな森に向かって、手を繋ぎ歩き始める。
実家から出て直ぐに、高さ2mほどの小さな丘陵を登り、竹林を進む。
「パパが小さい時は、そこの竹林に秘密基地とか作って遊んでたんだよ。」
「えー、いいなぁ~♪」
初めて歩く道。
初めて上る小さな丘陵。
初めての小さな冒険。
新鮮なんだろう。
テンションは直ぐにMax状態。
「おぉ!ひゃっほう!」
50cmの高さからジャンプして楽しみを表す。
小道に入った所で直ぐに小さな紫色の花を見つけた。
「なんだろねぇ~♪」
「ほら、図鑑で見てみれば?」
「あ、そっか!」
図鑑を取り出し、同じ葉と花の形と色を探していく。
「ん~、これかなぁ~?」
「んー、そうかもねー。イヌなんとかなんとか・・・。」
「わぁ、隣に白い花があるよ~♪」
「それはなんだろうねぇ?」
「ん~、この図鑑には載ってないみたい。」
「まぁ、載ってないのもあるって事だよ。だってその図鑑はパパの弟が小さいときに使ってた奴だから。子供用の小さい奴だし。」
「ふ~ん。」
分からない事が恨めしそうに、その場を後にし先へ進む。
「ここらへんは、パパが小学校に行くときに使ってた道だから、もう少し行けば、森や畑があるはずだよ。花とかいっぱい咲いてるから楽しみにしといて!」
「たっのしみ~♪」
数十年ぶりに俺も歩いた。
進んだ先に、森や畑はなかった。
マンションが元森や元畑に建っていた。
「あぁ、変わったなぁ・・・」
ちょっとセンチになってしまった。
「パパ~、まだぁ?」
「ん~、この辺は昔は森や畑があったんだけど・・・マンションとか建ってるから森はないねぇ・・・あ、でもほら、あそこ!」
「あ!紫の花発見!」
まだ空き地が点在していた。
空き地に広がる花畑に向かって一直線に走り出すムスメ。
「なんの花かなぁ~?」
図鑑を片手に調べるもまたもや載っていない。
「わかんないねぇ。」
俺は花の知識は毛頭持っていない。
「しょうがないなぁ。あ、黄色のお花♪」
ムスメは少し呆れ、興味は別の花へと移動した。
「それは、菜の花だよ。」
「なのはな~♪きれいぃ~♪あ、あそこ、てんとうむし♪」
俺にはてんとうむしが見えなかった。
「どこ?」
「あそこ!」
指差す方向をムスメの背後から目で追う。
「おぉ、あんな遠い所のてんとうむしが見えるのか!?すげーなぁ!」
5m先の草の中の紛れ込むてんとうむしを見つけた。
子供ならではの目線と視力。
「潰すなよー。」
「大丈夫だって!あ!」
てんとうむしは手から逃れ、飛んで行った。
「逃がしたんだよ。」
逃げたと逃がしたを誤魔化すムスメ。
「こうやって捕まえるんだよ。」
てんとうむしの歩道上(?)に指を置き、乗せてみせる。
そして、天辺まで登ったてんとうむしを解き放つ。
「へぇ~。パパ、意外とやるねぇ。」
「だろ。グーで捕まえると潰しちゃうからねぇ。優しくしてあげないと。」
「わかった~♪」
てんとうむしを探し回り、捕まえては飛ばす。
飽きたら今度は花摘み。
紫色の名の分からない花と菜の花を俺が摘み、ムスメに渡していく。
あっという間に、小さなブーケが出来た。
「ママにあげる~♪」
「お!それいいね。きっと喜ぶよ。」
小さなブーケを左手に、右手は俺の手を繋いで小さな丘陵を越えて帰り着く。
花を水に差して、手帳にお絵かきが始まった。
10分経った頃合に、
「パパ、これあげる♪」
「ん?あー、さっきの花摘みだね。」
「うん♪楽しかった~♪」
『とてもだいすき○○(ムスメの名)♥』
のコメントと、俺がムスメに花を摘んでいる様子を描写した絵を貰った。
親としてこれ以上嬉しい事はないよ。
ムスメの小さな冒険のオチは、涙が出そうだった。
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