「桜島に雪が積もっている映像はあんまり見たことは無い様な・・・。」
ミヤネ屋で宮根さんは、鹿児島市内平地での雪解けが進む映像と共に語った。
年に数回、桜島に雪は積もるんだなっ、コレが。
しかし、1合目まで積もるのは物心ついてからは始めての光景の様な。
まだ予断は許されない状況なのだが、冬将軍が演じる『氷の乱舞』は終わりを迎えつつある。
ここ『山地』はまだまだ雪が降り続いている。
道路はアイスバーン。
タイヤが傷むからチェーンは持っていない。
スタッドレスタイヤも高価だから持っていない。
会社を休まざるを得ないダンナ。
数人は出社した様だが、同様に休むご近所さん達もいた。
「ガシャガジャー、ドサッ。ガシャガジャー、ドサッ。ガシャガジャー、ドサッ。」
午前中は慣れない除雪作業を近所の数人で行った。
除雪作業は初めてしたかもしれない。
昨日のかまくら作りで既に全身筋肉痛だが、安全確保の為やるしかない。
除雪道具は先の尖った畑用の金属製スコップ。ちりとり。ほうき。
男性陣は重量のあるスコップを振り回して排水溝へ向けて撒き散らす。
女性陣はちりとりやほうきで細かく残滓(ざんし)した雪を道路脇へ追いやる。
数回の雪搔きをしては腰に手を当て一息吐く。
雪山でスキーしかしたことが無く、スキーしたさで雪国に憧れを持っていた。
しかし、除雪作業を体験したことで、雪国に生まれなくて良かったと安心した。
一通り除雪を終え、道路向かい、ムスメの通う園を見てみる。
「預かりをしている人はいるのだろうか。」
少し気になった。
うちのムスメは勿論お休み。
教員の数が少なくて対応に追われる先生達が不憫に思えたから、登園させなかった。
1人の男性職員が駐車場を除雪していた。
馴染みの顔だ。
何故だろう。
気付けば、スコップ担いで先生に歩み寄り声を掛ける俺が居る。
「おはようございます。せんせ、手伝うよ。一人じゃきついだろうから。」
「おはようございます。助かります。ありがとうございます。」
「いえいえ、万事屋なんで。困ってる人は見過ごせないんですよ。で、今日は何人くらい登園してます?」
「今、5、6人ですかね。やっぱりお仕事に行かれる親御さんもいらっしゃいますから。」
園児は80数名。その中の1割にも満たない人数だ。
「ほぅー。学校も休校なのに、子供置いて仕事ですか。まぁ、しゃーないか。でもそこまでして稼ぐかなぁ。」
後半部分は独り言の様にぼやきつつ除雪していく。
30分程で除雪は終わった。
先生からお礼を言われつつ、たまには普通に話してみたかった。
「で、せんせ、何時に来れました?」
「朝5時に家を出て、駅まで40~50分歩いて、駅で2時間待たされました。こっちの駅に着いてもバスは運行してなくて、タクシーも2時間待ちって聞いたんで、園まで歩いてきて10時半ぐらいに着きましたよ。」
「は!!それ、若さ故できる事でしょ!まじで!?歩き?駅から?7キロぐらいだよね。うへ~。」
足場の悪い雪道を歩く事は、普段使う筋力パラメーターと違うはず。
何故そうまでして来る意味があるのだろうか。
「せんせ、子供好きなんですか?」
急襲のストレートを投げる。
「え?ですねぇ。好きじゃないと・・・」
後半少し口ごもる。しかし、その先は代わりに俺が言う。
「好きじゃないと続きませんね。給料もいいって訳じゃないですもんね。なるほど。良かった。」
保育師の給料は一般的に14万~17万。
話が解るか、解らないかの瀬戸際の子供達を相手にする。
時に子供の生存に関る事態もあり得る。
国家資格とは言え、待遇のいい仕事で無い事をよく知っている。
だから、先生が素直に「好き」と言ってくれた事が心から嬉しかった。
「あの、kootさん、サッカーしてました?」
「あ、まぁ、趣味で少し。フットサルですけど。そこそこはやってました。」
「今、園でサッカー教室やってるんですけど、私は野球小僧なのでイマイチ教え方というか、免許は持ってるんですけど、よく分からなくて。どうです?たまに来ませんか?」
「え?保護者参加っていいんですか?」
「えぇ、kootさんなら大丈夫ですよ。」
「うん~。暇ですしね。出不精なんでたまにで良ければ逆にお願いしていいですか?」
「そりゃぁ、もちろん。いや~、一人でやるのも大変なもんで、kootさんもいれば安心できますよ。」
目はキラキラしていた。嘘は吐いてない瞳の奥。
『仲間が増えた』的な嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「あまり無理しないで下さいよ。お疲れ様でした~。」
と告げ帰宅。
また、スカウトされた。
今回のはそんなに重い話だから気にはしない。
寧ろ、運動不足解消になるから、やってみても悪くない話。
無給料だけど、子供の為には体を厭(いと)わない。
俺は、
「百の子供を楽しませる間に千の子供が喜んでいく。千の子供が喜んでいく間に万の子供を助けられる。」
と思っている。
万事を護って生きたい。
そう、俺は万事屋なんだ。
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